転がる石にコケまくる


昨年の秋、新潟で発生した中越地震。
あれから半年以上が経過したが、現地はどんな様子だろうか。
あの時ボランティアで知り合ったS井さんから招かれ、
寝袋Mさんと共に福島県・只見の御自宅へお邪魔することになった。
ついでといっては何だが、新潟の小千谷の現状も見てこよう。
さらについでといっては何だが、福島の林道の現状も見てこよう。(ぉぃ
かくして極悪林道をからめた奥会津~中越ツーリングが決定した。
7:15、出発。
今日はS井さんのお宅へ泊めていただくのでキャンプ道具は置いてゆく。
身軽な上にソロではないので極悪路に挑むにしても気持ちに余裕がある。
大泉から東京外環を北東へ進み、川口JCTを経て、7:50、東北道へ合流した。
8:05、蓮田SAに到着。カレーパンとアンパンの朝食を摂る。

東北自動車道 埼玉の蓮田SA

東北自動車道 埼玉の蓮田SA

朝食のアンパン 普通のアンパン

朝食のアンパン 普通のアンパン

寝袋Mさんとの待ち合わせは那須高原SAに11:00だ。
川口から160kmの距離なのでかなり時間に余裕がある。のんびり進もう。
セローも、もうすぐ4万km。このツーリングから戻ったらエンジンのOHの予定だ。
最後の一仕事がんばってくれよ。エンジンちゃん。(ポルコ・ロッソ風)
てなわけで、その後も自衛隊の車両隊列と前後しながら東北道を北上。
那須高原SAには10:15に着いてしまった。
まぁもともと早めに到着して仮眠を取るつもりだったので問題ない。
昨夜はツーレポ書いててまた寝不足なのだ。
水を一杯飲んでから、日陰のベンチで昼寝。すでにかなり暑い。
週間予報では降水確率が高かったが、この分なら今日は雨もなさそうだな。

東北道 那須高原SA

東北道 那須高原SA

うとうとまどろんでいると、隣のベンチから二人の男性の声が聞こえ始めた。
「下郷ってどこだ?」「うーん、ないなぁ…」「古い町並みがあるらしいけど」
地図を必死で探してるようだが、目的の地名が全然見つけられないらしい。むぅ。
しばらく放っておいたが、リサーチ済みで場所を知ってる僕としてはもどかしい。
むくっと起き出して「会津若松の南の方ですよ、ほらここ」と指し示した。
「この大内という集落が古い町並みで有名です」(←行くつもりなので詳しい)
「なるほど、ありがとう」と言われたが、大きなお世話だったかな。
僕がスッキリしたから、まぁいいや。
寝袋Mさんは11:05に到着。
遅刻を詫びられたが、前回清水での僕の大遅刻に比べれば遅刻のうちに入らない。
食事は林道を一本走ってから、ということで、早速出発。
白川ICを降りてR289を西走。給油を済ませ、コンビニで飲み物を購入。
僕は2Lの水。こういう日はとにかく水は沢山確保しておきたい。
11:45、雪割橋を右折して、鎌房甲子林道へと向かった。

雪割橋より甲子山を望む

雪割橋より甲子山を望む

GPSにこの辺りの詳細地図を仕込み忘れたため少々迷いつつも、11:55、起点に到着。
ややガレ気味の上り勾配をしばらく進んで、12:05、西部林道との分岐に達した。
いよいよ本格的な悪路の始まりである。ここからはMさん先行。
僕はヘタレモードで写真を撮りつつ後から進むことにした。
…っと、いきなり石に乗り上げ、コケてしまった!
あわてて起こしてよく見ると、ここまでの道のりでリアの荷物が崩れていたようだ。
工具類なので結構重さがある。ちょっとしたスペースに停めて、ストレッチコードを解いて締めなおした。
かなり時間を浪費して走行再開。だが、この転倒からバイクの調子がおかしくなり始めた…。

またやってきました西部林道との分岐

またやってきました西部林道との分岐

鎌房甲子林道 相変わらずガレてます

鎌房甲子林道 相変わらずガレてます

アクセルを回す際、ちょっとだけ抵抗感がある。
芯のハンドルバーが歪んでしまったのだろうか…?
少し手首に力を入れねばならない。またアクセルの戻り具合もおかしい。
手首から力を抜いても閉じるまでにタイムラグがある気がする…。うーむ…。
アクセルワークに難儀しながら、半クラッチを駆使してガレ場を登る。
昨年の秋にも来たが、酷い道だわ…。

路面は荒れ気味で幅員は狭いです

路面は荒れ気味で幅員は狭いです

路肩に注意して進みませう

路肩に注意して進みませう

おっちゃん! ガレ一丁!

おっちゃん! ガレ一丁!

はい、ガレガレお待ち!

はい、ガレガレお待ち!

アクセルの不調のせいか、低速トルクがなんだか頼りなくなってる。
それでもセローの足つきのよさに助けられながら、ガレ場も無事クリア。
峠が近づいてようやくフラットな区間になった。
南側に開けた展望を楽しみつつ、12:40、甲子峠でMさんにようやく追いついた。
休憩して水分を補給。晴れて嬉しいが、ふー暑い。

甲子峠付近の甲子林道 落石注意

甲子峠付近の甲子林道 落石注意

那須連峰の最高峰・三本槍岳を望む

那須連峰の最高峰・三本槍岳を望む

鎌房甲子林道より那須高原を一望

鎌房甲子林道より那須高原を一望

さて、そろそろ昼飯を食べに行こう。目指すは下郷町・大内宿。
ダート混じりのワインディングを西に下り、R289に合流。
下郷でR121を横切って、13:15、県道131号へ。
そのまま北上して中山峠を越え、13:30、大内宿に到着。
昔ながらの街並みを残す…って那須高原SAで説明した通りのスポットである。
随分混雑してるなぁ…と思ったらそれもそのはず。
偶然にも今日7月2日は半夏祭りと呼ばれる地元・高倉神社の祭礼の日だった。
平安末期に平家追討で担ぎ出された以仁王を祭る神社だ。
観光客が見守る宿場街の通りで、大掛かりな祭事や行列を見ることができた。

会津下郷町 大内宿

会津下郷町 大内宿

偶然、半夏祭りという祭礼の日でした

偶然、半夏祭りという祭礼の日でした

昼飯だが、ダー岩井さんのツーレポ情報を頼りに大和屋という店へ。
僕が注文したのは「ねぎそば」と五目ご飯のセット1400円。
…はい、そこのあなた! 刻んだネギたっぷりの蕎麦を思い浮かべましたね?
ぶぶー。残念、違います。蕎麦+生ネギ一本。以上、ねぎそば。
ネギは箸代わりに蕎麦をすすったり、薬味として齧るように。
おっと、冗談と思われるかも知れないが、これがマジなのだ。

これがねぎそばセット 長ねぎ一本丸かじり

これがねぎそば 長ねぎ一本丸かじり

店員のお姉さんのレクチャー通り、長ネギを齧りながら喰ってみたが段々胸やけがしてきた。
Mさんは「ねぎが余り好きではない」という尤もな理由でザル蕎麦を注文。あぁ、羨ましい。
キュウリ蕎麦やアスパラガス蕎麦ならこれほど辛い思いはせずに済むだろうに何故ねぎ…。
愚痴りながらも半分ほど長ネギを食べたところでギブアップ。げふっ。
この世に生を受けて34年、これほど生のねぎを食べたことはない。これからも無いだろう。
「ねぎの丸かじり」って東海林さだおかよ! …と突っ込みたくなる食べ物ではある。
食事を終え、腹ごなしに多少散策してから、14:35、出発。
来た道を戻って、下郷でR121を右折し西へ進む。
途中でKDXの給油を済ませ、田島で併用区間からR289をさらに西走。
15:20、駒止トンネルのすぐ東側にある多々石林道の入り口に到着。
ついに来た、東日本を代表する極悪林道。甲子林道も悪路だったが、さらに酷いらしい。
林道の案内板・管理人うーたんさん曰く、「甲子林道を3として多々石林道が10」。
…ドキドキするなぁ…。ここもMさん先行で突入。
しばらくは舗装の準備区間のフラットダートが続く。
1kmちょっと進んだところでそれも終わり。さぁ、超極悪路の幕開けだ。

多々石林道入口…滅びへ至る道は広い…

多々石林道入口…滅びへ至る道は広い…

いきなり狭くなります 心の準備は済みましたか?

いきなり狭くなります 心の準備は済みましたか?

狭っ!! なんだこりゃ、まんま獣道じゃねーかっ!?
左右から草木が覆いかぶさり、少し先の路面も見えない。
しかも足元は石ゴロゴロの上、深い溝だらけ。
最初のうちは溝を避けて進んだが、どうにもこうにも避けようが無い区間があらわれた。
半クラッチ、リア荷重でマディな溝を進むのだが、アクセル不調のせいもあって悪戦苦闘。
途中の段差に突っ込んだ衝撃でバイクを支えきれず、また転倒してしまった。
ブレーキレバーは捻じ曲がり、ミラーもあらぬ方向を向いている。
アクセルの調子も一段と悪くなった。

多々石林道 この道であってるのか…?

多々石林道 この道であってるのか…?

枯れ沢を登ってるようなもんですな

枯れ沢を登ってるようなもんですな

幸か不幸か溝の中での転倒なので起こすのは意外と楽だった。
しかし、その先、溝がようやく終わる辺りで立ち木に左ハンドルがブチ当たってまたまた転倒。
ここまでの道のりでだいぶ体力を消耗しているので起こすのが辛い。
ヒィヒィ言いながら起こして端っこに避け息を整える。
ネギと震動のせいか、胸のムカつきが尋常じゃない。あぁ、気持ち悪。
っと、向かい側からオフロード集団がやってきた。
会釈しながらやりすごす。最後の一人が僕にこう告げた。
「自分で最後です、この先、荒れてますから気をつけて下さい」
ヒイィィィ!!!!(゚ロ゚ノ)ノ

キャンプ荷物が無くてラッキー…

キャンプ荷物が無くてラッキー…

この先が深い溝の区間 写真撮る余裕無し

この先が深い溝の区間 写真撮る余裕無し

再出発してしばらく進むと、豪快な土砂崩れの手前でMさんが待っててくれた。
心配掛けてすみません。ここでまた少し休憩。
曲がったブレーキレバーやナンバープレートを応急処置してから土砂崩れ越えに挑んだ。
盛り土の規模は東因幡林道で一番大きかったやつと同程度。
Mさんのサポートもあって、二人とも問題なくクリア。
写真を撮り忘れてしまったのが残念だ。
その先はさらにガレガレの登り勾配となったが、転倒はせずに済んだ。
バイク集団の警告で、走りが慎重になったおかげかも知れない。

名前通り、石が転がりまくってる林道ですな

名前通り、石が転がりまくってる林道ですな

深いクレパス 路肩崩落も2箇所ありました

深いクレパス 路肩崩落も2箇所ありました

やがて路面は幾分フラットになり、16:10、戸坂峠に到着した。
標高1300m超の広場でMさんと二人でしばらく休憩。
あぁ、疲れた。これまで走ってきた林道の中で一番荒れた林道だった。
セローはかなりボロボロな状態。もうアクセルは自動的に戻らなくなった。
遊びの量が異常に多くなり、半クラッチが難しい。
普通に発進するだけでもエンストしそうだ。
(戻す側のアクセルワイヤーが切れているのを翌日確認)
峠付近は展望良好。西へ下る道はごく普通の林道並の荒れ具合。
工事中の区間を過ぎ、舗装路面をさらに下って、16:35、伊南村へ出た。

戸坂峠より会津の山々を望む

戸坂峠より会津の山々を望む

倒木が道を塞いでたが二輪なら通れます

倒木が道を塞いでたが二輪なら通れます

ここでMさんからS井さんに状況確認の電話。
まだ帰宅までしばらく掛かるらしく、我々もウロウロする暇があるようだ。
ってことで、もう一本林道を走ろうと林道小塩塩之岐線へ向かったのだが、工事で通行止め。
仕方なく伊南川沿いにR289を只見方面に進む。
奥会津の田園風景を楽しみつつ、西へ快走。
アクセルが戻らないので、開度を適度に調節すれば右手を離して巡行も可能だ。
クルーズドコントロール付きのセローはなかなかあるまい。いらんけど、んなもん。

小塩塩之岐林道は工事中で通行止

小塩塩之岐林道は工事中で通行止

阿賀川水系只見川の支流・伊南川

阿賀川水系只見川の支流・伊南川

17:25、S井さんの御宅に到着。まずは奥さんにご挨拶。
ご主人が戻ってくるまでもう少し時間が掛かるようなので、Mさんと二人で近くの温泉へ行くことにした。
向かった先は深沢温泉・むら湯
500円の入浴料を支払って、汗を流して湯船へザブン。極楽極楽♪
赤茶色のお湯がいかにも疲労に効きそうだ。大きな窓からの眺めも良い。
二人で雑談しつつ、のんびり体をほぐしてから上がった。

只見町・伊南川の夕暮れ

只見町・伊南川の夕暮れ

季の郷・湯ら里 深沢温泉むら湯

季の郷・湯ら里 深沢温泉むら湯

18:40、S井さん家に戻ると既にご主人も帰宅されていた。
無沙汰を謝し再会を喜びあった。Mさんはこれまでに何度か訪れているそうだ。
冬に雪の中をバイクで来たら吹雪で帰れなくなった、という話は僕も聞いている。
スノーモービルも運転させてもらったらしい。うーん、楽しそう…。

二台とも、おつかれちゃーん

二台とも、おつかれちゃーん

挨拶が済んだら早速、ドラム缶を利用した炭火台で焼肉開始。
ご夫妻におばあちゃん、愛犬のベルを交えての庭パーティである。
あぁ、ビールが美味い!!! マトン、馬刺、野菜に軟骨。
馬刺しは会津の名物として有名だが、マトンは知らなかった。
この地方では以前から日常的に食べられていたそうだ。
ニンニクの効いた特製のタレがまた美味い!!
飲め飲め食え食え、と豪快に勧められるまま、バクバク、グビグビ。
遠慮しちゃかえって失礼ってもんでしょう。いや、本当にご馳走様でした!

半端じゃない肉の量 しかもメチャ(゚Д゚)ウマー

半端じゃない肉の量 しかもメチャ(゚Д゚)ウマー

銘酒・十四代の大吟醸 (゚Д゚)ウマー

銘酒・十四代の大吟醸 (゚Д゚)ウマー

一人で四合全部飲んでしまった…(^^;)

さらに興が乗ってきてS井さんが持ち出したのが熊肉。筋が多いが僕は嫌いではない。
ただ既に満腹近かったし、他の肉もまだまだ焼いている途中だったので食べたのは一切れだけ。
そして最後に登場したのが、謎の食べ物・なっちもの
奥さんは苦手らしいが、ご主人が盛んに勧めるので食べてみた。
( ̄~ ̄;) ウーン
渋い。
渋みというかエグ味というか、一口食べただけで口の中にそれがブワーっと広がる。
渋柿を食べた時、口の中の粘膜がなくなってキュッキュ鳴る、あの食感だ。
酒で口の中を洗い流してもなかなか消えない。
聞けばアカハラ(ウグイ)の内臓を使った塩辛だそうだ。(参照ページ
ウグイの内臓がこんな味になるとは思わなかった。
ご飯のオカズや酒のツマミに好んで食べるまで慣れるには、ちょいと時間が掛かるかも知れない…。

なっちもの 実に変わった味でした

なっちもの 実に変わった味でした

〆はエゴマの葉で包んだ焼オニギリ (゚Д゚)ウマー

〆はエゴマの葉で包んだ焼オニギリ (゚Д゚)ウマー

住んでる場所や家族の話をひとしきりした後、僕の仕事の話題になった。
「そうだ、只見に来て木地師にならないか?」
むむぅ。何とも魅力的なお誘いである…。
勿論すぐには決めかねるが、それもいいなぁと率直に感じてしまった。
人生なんて偶然の出会いやきっかけで一変するものだ。それを楽しまなくちゃ。
転がる石のように生きるのも、そんなに悪くない。うん、たぶん。



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