ワイルドで行こう・前編


もう六月。入梅も間近だ。
梅雨、そしてその後にやってくる盛夏を考えると、快適にキャンプできるのは今週くらいまで。
M氏を誘って釣りメインのキャンプツーリングにでも出かけてみるか。
と電話を掛けてトントン拍子で釣行決定。行き先は海も考えたが時期的には渓流が最盛期。
相談の結果、獲物はイワナ、目的地は群馬の片品方面と決まった。
出発前夜。やっぱり今夜も眠れないので荷造りに時間を掛けてしまった。
いざとなったら荷物を背負って渓流遡行しなきゃならないかも、と思って今回はサイドバッグ無し。
林道メインでは無いので、いつも携行している工具も今回は置いていく。テントも小さい一人用。
その他装備を極力減らし、3WAYバッグに全て詰め込んで朝を迎えた。
午前7:00。自宅前にM氏登場。
荷物は背負うのには向いてなさそうな中くらいのダッフルバッグ。
「バイクのそばにテント張って中に荷物入れておきゃいいでしょ」
端から渓流遡上なんてするつもりないのね…。
そんなことならサイドバッグ使っていつもの装備にすりゃよかった。
給油して環七を北上、目白通りを経て、7:30、関越道練馬ICへ。
さてここからはひたすら新潟方面に進む。途中二箇所ほどで事故渋滞。
なんでもなさそうな直線での事故。不思議だ。
8:25、上里SA到着。日差しが結構強い。走っていると涼しいが、止まると暑い。
とりあえず朝食。私はかきあげそば、M氏は岩のりうどん。20分ほどして出発。
やがて左手に榛名山。さらに右手には赤城山。
特に渋滞もないまま一時間ほど走って、群馬の沼田ICで高速を降りた。
練馬から約123km。ほどほどの距離だ。そのままR120を沼田市街へ向かう。
釣具屋を探し、5分ほどで見つけた。
「ミミズ(小)二箱下さい。あと入漁券も」
ミミズは300円、渓流の入漁券は1000円だった。このあたりならどこでも使えるらしい。
ついでにM氏が必要な釣具を購入。そのお店の前でUターンして今度は片品村方面に転進。
おっと、この先ずっと買い物できる場所がないかもしれない。
インター脇のコンビニで昼食用のおにぎりを買い、県道64号との交差点を川場方面に左折。
その先で見つけた酒屋でビールとサワーを買って準備万端。
M氏「夕食、どうする?」
塩犬「米は持ってきてますよ。ってか米と調味料しかないです」
M氏「ツマミとかオカズは?」
塩犬「んー?イワナの塩焼き…」
M氏「釣れなかったら塩飯だな…」
塩犬「むぅ…サバイバルっすね…」
県道64号線を武尊山(ほたかさん)方面に北上。そのうち山間のワインディング路に。
しばらく進んで、武尊温泉を過ぎたとこで右折。赤倉林道の入口に到着した。
赤倉林道は赤倉渓谷に沿って作られた林道である。
一部分の路肩が崩壊しているため四輪の通行は完全に不可。
路面が幅50cm程度しか残ってないらしく、二輪でも危険なので交通量はほとんどない。
誰も行かない、ってことでそこに行くことにしたのだ。
入口から数分で問題の崩落箇所へ到着。ちょっと緊張しながらも無事通過。
ポイントと野営地を探しながら走ったが、どうにもよさげな場所がない。
ガレガレの岩盤を超えて三叉路があったと思ったら、その先はフラットな走りやすいダートだった。
脇に野営できそうな芝のスペースがあったので、とりあえずそこにバイクを停めて様子見がてら釣り開始。
道端を沢が流れてはいるが、ほとんど藪に包まれて竿を出すのも覚束ない。
入渓出来そうな場所を求めて徒歩で林道を進んだが、上流は見込みなさそうだ。
二人で釣りながら下流を戻る。どうもこの沢は駄目っぽいなぁ…。
林道脇で流れが少し弱くなってるポイントで、少し離れて二人で粘ってみる。
しばらくして、まずM氏が一匹。続いて僕も一匹。
合計二匹のイワナがヒット。どちらも10cmちょっとのリリースサイズ…。
うーん…ひとまず釣れたのは嬉しいが、オカズにするには物足りない。。
(といいつつ、本日最初で最後の釣果になるかも知れないのでキープしてしまった…)

赤倉林道 写真の陰影がきつい…

赤倉林道 写真の陰影がきつい…

赤倉渓谷で釣ったチビイワナ2匹

赤倉渓谷で釣ったチビイワナ2匹

M氏「この川ではこれが平均サイズなのかも知れないね」
塩犬「まだお昼で時間あるし、別の川に行って見ますか」
バイクまで戻り、昼飯のオニギリを食べて別の川へ移動開始。
赤倉林道を進み、峠を越えて片品村へ。

赤倉林道から片品方面を望む

赤倉林道から片品方面を望む

県道64号線を右折。平川の交差点でR120を右折し、すぐに左折。
利根川水系片品川の支流、泙川(たにかわ)沿いに走る平川林道を進む。
舗装路が続き、 ひとつ集落を超えて山道へ入った。
しばらく走ると川原へ降りれそうな未舗装路が分岐していたので、そちらへ進む。
やや荒れ気味のダートを下って、広い川原に出た。なるほど平らな川だ。

泙川 フライフィッシングに向いてそう

泙川 フライフィッシングに向いてそう

キャンプには問題なさそうだが、魚はどうだろう。
川の様子からすると、ハヤかヤマメのエリアかな。まぁ、釣ってみっか。
踝程度の深さの瀬を渡って徐々に川を遡りながら竿を出す。
二人とも本流用の長い竿ではないのでポイントを攻めづらい。
っと、こういった瀬での釣りには自信のあるM氏が早速ハヤをゲット。
30分ほどの間にM氏がハヤ3匹、私はゼロ…_| ̄|○
M氏「あれ?釣れてないの?」
塩犬「はは、ハヤなんていらないっす! イワナが目的っす!!」
M氏「そうね…(゚ー゚)ニヤニヤ」
塩犬「むぅ…」
M氏「ヤマメっぽいアタリもあったけど、このあたりじゃイワナはいないだろうね」
塩犬「地図によると林道をかなり遡ったところで、沢に降りれそうな場所がありますよ」
M氏「んじゃ、そこまで行ってみるか」
バイクの場所まで戻ってダートを上り林道へ復帰。
…ん?後続のM氏がなかなか来ない…?
どうしたのやら。 数分してようやく現れた。
M氏「川原でUターンするときにこけてしまった…」
塩犬「それは珍しい…(゚ー゚)ニヤニヤ」
M氏「むぅ…」
貴重なシャッターチャンスを逃してしまって残念である。
特に異常なさそうなのでそのまま出発。
ここまでの舗装路の様子から、この先の林道も走りやすいだろう。
不動滝を越えたあたりから路面は未舗装に。むむ、結構荒れてる…。
登山者だろうか、路肩に何台か4WD車が停めてあった。
っと向こうからやって来たバイクとすれ違った。
オフロードではなく50ccくらいの小柄なビジネスモデルである。
なるほど、ここらへんに車を停め、積んできたバイクや自転車でこの先を進む人が多いようだ。
しばらく進んでゲートにぶつかった。
脇に腰の辺りまで盛られた土があったが、そこに二輪の轍があった。
そっか、このゲートで四輪は進めないのか。脇を二輪で抜けるしかないのね。
微妙な角度の盛り土だ。M氏が先行して難なくクリア。続いて僕。
頂点の手前でちょっとビビって…ズルズル後退…あえなく転倒。。
M氏「(゚ー゚)ニヤニヤ」
塩犬「むぅ…」
くそーこっぱずかし~。左ハンドルを掴んで、あわててバイクを起こす。
…ん? 何か変な感触…?
よく見ると、ハンドルと間違えてクラッチレバーを掴んでた…。
全車重がかかったクラッチレバーはグニャリ。

平川林道 ゲートの右に問題の盛り土

平川林道 ゲートの右に問題の盛り土

クラッチレバーが?型に曲がってしまった?

クラッチレバーが?型に曲がってしまった?

いつも替えのレバーを持ち歩いてるのだが、今日に限って工具と一緒に置いてきてしまった。。
「起きてほしくない事ほど、良く起きる」 まさにマーフィーの法則である…。
まぁ指二本で握れるので問題ない。というか微妙に握りやすくなったかも知れない。
こんな時こそ、ポジティブシンキング。やや大回りでゲート脇をようやくクリア。
その先も落石・水溜りの多い道だった。予想以上の悪路だ。
山側は見上げるほどの断崖絶壁。川側は底知れぬ千尋の谷。久々に恐怖を感じた…。

土砂崩れ、落石が何箇所も

土砂崩れ、落石が何箇所も

落ちたくない…絶対…

落ちたくない…絶対…

そして極めつけ。
左から土砂崩れ、右は崖、頭上に倒木、路面はガレ。
四面楚歌の極悪セクションである。

そりゃ四輪が通れる訳無いわな

そりゃ四輪が通れる訳無いわな

果たして無事に帰れるのだろうか…。
一晩の間に新たな土砂崩れが起きて完全通行不可になったとしても、ちっとも不思議じゃない…。
そんな極悪林道を10kmほど走って、右手に二段の大きな堰堤がある橋に出た。
左手には野営できそうな広めの川原。橋を渡ると林道の標識があり「三重林道」と書いてある。
どうやらここから林道の名前が変わるらしい。
念のためその先の林道をちょっと進んでみたが、上り勾配になっていて再び山中に戻るようだ。
迷う時間も惜しかったので、ここを野営地に決定。時刻は15:00。
標識の脇にバイクを停め、荷物を手に川原までの斜面を降りた。
大きな石や流木がゴロゴロする河畔を避け、一段高くなった場所にテントを張る。
(後で二万五千分の一地図で調べたところ、三重泉沢という沢だった)

泙川支流 三重泉沢

泙川支流 三重泉沢

落ち葉のクッションの上にテント設営

落ち葉のクッションの上にテント設営

まずはビールを渓流で冷やしておこうと見てみたら、なんとビールの缶に穴が!?
ザックびしょ濡れ!? Σ(TロT)
さっきのゲートで転倒したときにやってしまったらしい。。
悲しい気分でサワーのみを冷やす。
それからお米が二合しか残ってなかったことも判明。
だがまぁ二人の夕食・朝食分で丁度いいくらいだろう。オカズさえ十分あれば。(今のとこ無いです)
一合をコッへルに入れ、水に浸して準備はOK。
あとはツマミ&オカズを調達するのみである。
気合を入れてM氏は下流へ、僕は上流へ。
っと、橋の下に何かある?

ニホンカモシカの白骨死体…?

ニホンカモシカの白骨死体…?

いきなりカモシカ…。どうしても、わが愛車セロー(カモシカの意)を連想してしまう…。
その白骨死体とは何とも不吉な…。。一緒に無事に帰ろうな、セロー君。
嫌な予感を払いのけ、晩餐を掛けて釣り開始っ!
イワナの塩焼きで満腹コース? それとも極貧・塩掛け御飯?
今夜のご注文は、どっち!?



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です


*