しばれたプロメテウス


ついこないだまで暑い暑いと思っていたのに、あっというまに涼しくなった。
東京でさえ朝など肌寒いくらいだ。紅葉の便りも聞こえ始めた。
色づき始めた山々を見たいなら、なるべく標高の高い場所がいいだろう。
というわけで信州へ出かけることにした。
一応、防寒のためにユニクロで買ったフリースをジャケットの下に着込んで行った。

朝7時。自宅を出発。中央道に乗って山梨の須玉ICを降りたのが午前10:20。
高速を走っている最中からすでに、厚着してきてよかったと思った。 予想以上に寒いわ。

さて、そこからR141を八ヶ岳方面に北上。
途中、清里の「鉄道最高地点」で休憩。

清里 JR鉄道最高地点

清里 JR鉄道最高地点

11:00過ぎに、早めの昼食を食べたのだが、なぜか牛丼…。
(´ヘ`;) う~ん…

最初の目的地は八ヶ岳東山麓にある八ヶ岳林道。
ところが入り口がなかなか見つからない。
GPSを頼りに進んだが何しろ目印がないのだ。
「ここか?」と思って入る未舗装路は全て廃道だった。

草ぼーぼー

草ぼーぼー

道? どこよ?

道? どこよ?

やっと入り口にたどり着いたのが12:00。
通行止めの看板が立っていたが、ゲートは開いているのでとりあえず行けるとこまで行ってみる。
数分走ったとこで未舗装路になったが、少し進んだとこで工事中。
重機が道を塞いでいてとても通れないのでUターン。
地図でも通行止めと記載されてたので仕方ない。
迂回して、この先の区間を目指す。

通行止めしゃーないね

通行止めしゃーないね

一旦国道に出て、しばらく進み、また山麓を登る。
ゴルフ場脇の林道入り口に気付かず、ずいぶん迷った。
整地されたグリーンを横目に、林の中のダートを進む。

あやうくゴルフ場の中を走りそうに…

あやうくゴルフ場の中を走りそうに…

廃道を走った後なので、走りやすいこと

廃道を走った後なので、走りやすいこと

しばらく進んでさっきの通行止めの出口にぶつかった。
分岐を右に折れ、八ヶ岳林道の続きを走る。
この林道は八ヶ岳への登山口や温泉へ至る道なので四輪も多い。
やがてダートは舗装路になり、県道に出た。

標高2150mの本沢温泉へ至る分岐

標高2150mの本沢温泉へ至る分岐

八ヶ岳山頂は終日雲に覆われていた

八ヶ岳山頂は終日雲に覆われていた

県道を進み、国道299号線との交差点にあるレストハウスでトイレ休憩。
ただでさえ涼しい場所なのに、走っているので余計寒い。 トイレがどうしても近くなる。
5分ほどして、再出発。時刻は13:20。
次に目指したのは日石林道。少し県道を戻ってすぐ見つかった。
林を抜け、牧場の脇を通り、ゲートを開けて、すんなり終了。

日石林道から佐久方面を望む

日石林道から佐久方面を望む

牧場では遠足の小学生たちがワイワイやってた

牧場では遠足の小学生たちがワイワイやってた

そのまま舗装路を進み、迂回して茨沢林道へ。
かなり荒れた路面だが問題なく走行。
途中分岐を間違えて、立派なホテルの裏に出てしまったが気にしない。

茨沢林道入口 発砲禁止の看板が目印

茨沢林道入口 発砲禁止の看板が目印

緑と紅と黄色 色彩があふれる季節です

緑と紅と黄色 色彩があふれる季節です

林道を走り終えて再び県道に出たのは14:30すぎ。
八ヶ岳まで来ても、走破に数時間かかる長距離の未舗装路はないのだ…。
さて、次は国道299号線、愛称メルヒェン街道を西へ。
麦草峠を頂点にした標高2000mの高所を走る。
ワインディングの峠道走行に注意しながら紅葉の中を快走。

…っていうか寒い。

1000mで気温は6度変わるとか言われてるが、まじ寒い。
雲も多くなり、雨と言うほどではないが時々雫が落ちてくる。
防寒グローブをしていても指先がかじかんで来た。
いちいち記述してないが、そこかしこでトイレに寄った。

麦草峠 国道で2番目の高所らしい

麦草峠 国道で2番目の高所らしい

さすがに標高2000m 紅葉も最盛期

さすがに標高2000m 紅葉も最盛期

15:40。国道152号線の交差点で食料とガソリンを補給して、白樺湖方面へ。
目指すはビーナスライン。日本でも有数の快走路。今回のツーリングの目的でもある。
楽しみなのであまり予習してない。どの程度の時間がかかるのかも不明である。
今夜の宿泊ポイントが少し気になりつつ、午後4時、白樺湖に到着。
大門峠を左折したら、いよいよビーナスラインだ。

白樺湖 観光地化されてます

白樺湖 観光地化されてます

ビーナスライン 丘陵が女性的な曲線を描く

ビーナスライン 丘陵が女性的な曲線を描く

白樺湖俯瞰 美しい景観が続く

白樺湖俯瞰 美しい景観が続く

霧が峰の独特な地形 遮る木々すらない

霧が峰の独特な地形 遮る木々すらない

美しい展望と爽やかな高原がどこまでも続く。
雨が降ったのだろうか、路面がところどころぬれている。
西へ大きく傾いた太陽は、雲に隠れてもう見えなくなった。
寒い寒い。息が白い。
「これはかなり寒いですねー」
「そうですねー、気温は一桁でしょうねー」
などとヘルメットの中で独り言をしゃべりつつ、寒さを紛らわす。
紛らわしながら頭の片隅にあった不安がどんどん膨らむ。

今日の宿は…?

まじでもうすぐ日が暮れちゃうよっ!!(;´Д`)

今日、予定しているのは美ヶ原県民の森キャンプ場。
リンクさせたいが公式HPすらない無料のキャンプ場である。
キャンプ地までの正確な地図も手元にない。登山道らしき道があるようだが、バイクでどこまでいけるやら。
とにかく早めに到着したかったのだがビーナスラインが想像以上に長かった。
ビーナスラインを走り終え美ヶ原へ到着。目印の山荘を目指した。
そこからキャンプ場まで登山道があるらしいのだが…。

途中で食べたあったか~いキノコ汁

途中で食べたあったか~いキノコ汁

草食動物の腸のような美ヶ原の道

草食動物の腸のような美ヶ原の道

午後5時。山荘・山本小屋に到着。
えー、県民の森までの道。

車両通行禁止だってさ…_| ̄|○

さすがにもうしょうがない。
松本で健康ランドかビジネスホテル探すことにした。
途中、キャンプ場への登山道がもう一本あるようだが、あまり期待できない。

ビーナスラインを少し戻り、松本へ降りる県道を西走。
…っと、県民の森の看板を発見。
十分走れそうな林道が森の中に延びている!

ようやくキャンプ場に到着した。午後5時半過ぎ。まさに日が暮れる直前だ。
受付も管理事務所もないので、勝手に駐車場にバイクを停め、荷物を持ってキャンプ場へ降りた。
キャンプ場では若者のグループが一組焚き火をしていた。
テントはないようだが、他人を気にしてる暇はない。急いでテントを張る。
設営の簡便さに定評があるムーンライトを組み終えた頃には、すでにヘッドランプをつけなければならないほどの暗さになっていた。

食事の準備をしようか焚き火をしようか迷っていると、若者の一人が話しかけてきた。

「もう僕達帰るんで、よかったら焚き火使ってください」

∑o(*’o’*)o ウオオォォォォ!!

無茶苦茶嬉しい。薪もたっぷり残してくれていた。
テントを焚き火のそばに移動して、帰る彼らにお礼を言った。

一日中、バイクで走り体が冷え切ったためか、食欲があまりなかった。
米を炊くつもりだったが、とりあえずビールとつまみだけ。
焚き火にあたりながらチビチビ飲んだ。

焚き火とともに人類は生き延びてきたのだよ

焚き火とともに人類は生き延びてきたのだよ

長野名物「おやき」がビールのつまみ

長野名物「おやき」がビールのつまみ

焚き火の面倒を見つめていると、本当にいろいろなことに思いが至る。
赤く静かに燃焼を続ける熾火に息を吹きかけると、一気に温度が上がり炎が燃え立つ。
勢いよく燃える炎は、多少湿った木にもすぐに燃えうつる。
調子よく燃えていても、油断するとすぐに消えかけてしまう。
適切に薪を追加して、風向きを気にしながら配置しなければならない。

「地球上の生命も、こうやって誰かが一生懸命育んで来たんだろうな…」

揺らめく炎が生命そのものに思え、その面倒をみている自分が創造主かガイアを連想させて…思考はやがてとりとめもない方向へと進む。
プロメテウスが神々から盗み、罰を受けることを承知で人類にプレゼントしてくれた火…。
寒さに凍える人々に温もりと光を与えてくれる火…。
手に負えない激しさで全てを焼き尽くしてしまうほどの火…。

酒と焚き火で体が温かくなったためか、食欲が出てきた。
少しだけ米を炊いて、納豆・かつおぶし・海苔で素早く胃に押し込む。
丁度、薪もなくなった。夜9時過ぎ就寝。
炭水化物を摂取したお陰で暖かく眠れた。

ちなみに翌朝。

10月だというのに霜が降りてました。

美ヶ原県民の森キャンプ場は、標高約1600mの位置にある直火が許された無料キャンプ場である。
飲料水がないことと、ボッチャン式便所と、そして寒さを我慢できる人には超おすすめ♪

ザックカバーが真っ白

ザックカバーが真っ白

駐車場に車中泊の夫妻がいたので安心でした

駐車場に車中泊の夫妻がいたので安心でした



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