紀伊半島凸凹巡礼・海の巻


5:00過ぎ。自然と目が覚める。外がほのかに明るい。
風はほとんど止んでいた。とりあえず顔を洗って、納豆で朝飯。
食べ終わる頃にはすっかり日が昇っていた。撤収開始。

おもし代りに味噌汁乗っけてクツクツ炊飯

おもし代りに味噌汁乗っけてクツクツ炊飯

春はあけぼの やうやう白くなりゆく…

春はあけぼの やうやう白くなりゆく…

トイレもすませて、6:30出発。今日の最終目的地は本州最南端の潮岬。
とりあえず昨日走ったR260を鵜方まで戻る。丁度英慮湾を反時計回りに周る形だ。
鵜方からは県道を海沿いにひたすら西進。再びR260に合流し、南勢を経て、紀伊長島を目指す。

登茂山展望台から英慮湾の複雑な地形を眺める

登茂山展望台から英慮湾の複雑な地形を眺める

海面スレスレの高さを走り抜ける

海面スレスレの高さを走り抜ける

ずっと海沿いの道を進むつもりだったが、リアス式海岸でどうにも移動距離が稼げない。
途中で県道を内陸部へ折れてR42=熊野街道を進むことに。
川沿いの道で、さすがに勾配もカーブも緩やかだ。
快調に進んで10:00前に紀伊長島の道の駅・マンボウに到着。
この町はマンボウが名物らしく、道の駅ではなんと串焼きを売っている。
にわかに信じられなくて焼いていたおっちゃんに思わず「本当にあのマンボウなんですか?」と確認してしまった。
塩コショウで食べてみたが、鶏肉に似た食感で美味しい。見た目ユーモラスな魚なのだが意外な味だ。

紀伊長島の道の駅マンボウ

紀伊長島の道の駅マンボウ

マンボウの串焼き300円 美味いっす

マンボウの串焼き300円 美味いっす

普段口にしない海の幸と言えば、南紀の熊野は昔から鯨漁で有名だ。
今回の旅でも機会があれば食べてみたいものだ。
伊豆のあたりではイルカの肉が売られているという噂も聞くが、それにも少し興味がある。
哺乳類だから魚や鳥よりも牛や豚に似ているのだろうか…。
紀伊長島からさらにR42を南下。三重南部の大きな町、尾鷲に着いたのは10:40頃か。
ここから次の町、熊野へ行くには海沿いの県道と山中を行くR42との二通りある。
海沿いの道がツーリングマップルのおすすめルートになっているが、林道に行きたかったので敢えて山方面に。
ガソリンがだいぶ減っていたが、給油するにはちょっと早い。まぁ林道を走り終わるまで持つだろう。
矢の川トンネル、大又トンネルという二つの長いトンネルを抜けて、橋を渡って右折。
このツーリング初めての未舗装路、佐渡林道の入り口である。
しばらく進むとゲートがあった。開けて閉めて、さらに奥へ。
路面はフラットだが上り坂で結構傾斜がきつい。

佐渡林道入口

佐渡林道入口

勾配は急ですが走りやすい路面です

勾配は急ですが走りやすい路面です

峠を越えて今度は下り坂。沢沿いをのんびり進む。
柔らかな日差しに高所の木々も春の訪れを敏感に感じているようだ。

峠付近からの眺望

峠付近からの眺望

むき出しの岩盤を流れ落ちる沢水

むき出しの岩盤を流れ落ちる沢水

林道を進むにつれ、ガソリンの量が気になってきた。
思ったよりも佐渡林道が長い。国道まで持つだろうか…。
佐渡林道の終点は大又林道との分岐でもある。
そのまま大又林道へ。この林道を無事に通行できれば国道まで戻れるのだが…。
念のため、フュエルコックをリザーブにしておく。
大又林道はかなりハードな林道だった。
いきなり、長~い素掘りのトンネル。出口付近には落盤した岩塊のオマケ付。
路面も最近車両が通行した形跡がない様子。廃道寸前といった雰囲気。
っと思ったら、路肩崩壊。これじゃ四輪は通れないだろう。
「こりゃ、あぶねぇなぁ…」と慎重に進んだら、突然、首の高さにトラロープ!ガクガク((((;゚Д゚))))ブルブル
端っこの方に赤い布は巻いてあるが、とても見えにくい。
路肩崩壊で危険箇所だから通過しないように張ってあるのだろうが、かえって危険じゃなかろうか。
全速で走っていたら首チョンパになるところだった。

エンストしてライト消えたりしたら泣けます

エンストしてライト消えたりしたら泣けます

轍の痕跡すらない大又林道

轍の痕跡すらない大又林道

それにしてもこの悪路、国道側の入り口が封鎖されていないか心配だ。果たして通り抜けできるのだろうか…。
二回遭遇した鹿も、どうも人間に慣れてない様子。やはり人跡稀れなのだろうと、かえって不安にさせる。
いざとなったら今来た行程を尾鷲の町まで戻らねばならないが、
リザーブとガソリンストーブのシグ缶の中身でどこまで走れるやら…。
なんて心配も空しく、すんなり通過しR42へ。
ほっとしつつ、すぐに見つけたGSで給油。ガソリンの残量もなんだか全然余裕だった。
林道走行距離は25kmくらい。ガス欠に気を使わずに済んでいたらもっと楽しめたろう。
やはり林道へ入る前には余裕を持って給油しておきたい。反省。
国道に出たら、熊野までひたすら下り道。
数分走って海へ出た。雄大な熊野灘が目の前に広がっている。
13:00。 国の天然記念物・獅子岩でちょっと休憩。
四人組でツーリングしてる方々が、丁度、入れ違いで出て行くとこだった。
スクーターで荷物をつめない女の子の分だろうか、
うち一人が125ccくらいのバイクのリアキャリアの両側に銀マットを無理やりくくりつけ、
さらに上に荷物をガシガシ積んでいた。真似できない過積載、さすがだなぁ…。

熊野灘だな(←しつこい)

熊野灘だな(←しつこい)

獅子岩 たいして感動もしないけど…

獅子岩 たいして感動もしないけど…

このまま真っ直ぐ海岸線を進めば、すんなり新宮に到着するのだが、それではちょっと物足りない。
R311を再び山中に分け入って、熊野川沿いを下ることにした。
ひと山越えて、熊野川支流の北山川へ。
煌きながらゆったりと流れる大河の向こう側、深緑のそこかしこに山桜の白が映える。
なんて素敵な風景…。 イイヨイイヨー。

とぼしい詩心を刺激させられちゃう

とぼしい詩心を刺激させられちゃう

慎ましく咲く山桜が美しい

慎ましく咲く山桜が美しい

やがて道はR169を経てR168へ合流。北山川も本流の熊野川に合流した。
14:00。熊野川沿いにある道の駅・瀞峡街道熊野川に到着。
かあちゃんの店でめはり寿司定食600円を食す。
高菜の茎を刻んで御飯に混ぜ、それをさらに高菜の葉で包んだ料理らしい。
そのことを会話して聞き出したところ、方言で関東とばれたのだろう。
会計のとき他の客には「おおきに~」って言ってたのに、僕にだけ「ありがとうございました」だって。
うーん。何か悔しい。

めはり寿司 素朴で美味しかった

めはり寿司 素朴で美味しかった

桜にバトンタッチして力尽きた梅の花

桜にバトンタッチして力尽きた梅の花

食事を終えてR168をさらに進み、新宮で再び海へ出た。
熊野三社のひとつ、新宮=熊野速玉神社は敢えてスルーして那智の滝へ向かう。
平家物語が好きな僕には、どちらも外したくない場所なのだが、時間が無いので仕方ない。
那智勝浦の町へ入り、看板にしたがって県道を右折。
内陸へ向かって進むと、やがてワインディングの続く峠道へ。
有名な観光スポットだけあって大型のバスも多く四輪は大変そうだ。
15:00、那智の滝に到着。バイクを停めると、後ろからついてきていたスクーターの青年が話しかけてきた。
見れば目黒ナンバーではないか。
ミラー越しにスクーターには気づいていたが、半帽ヘルメットに素手なのでてっきり地元の兄ちゃんだとばかり思っていた。
トラックで滋賀まで運んでもらってそこからここまで乗って来たらしい。いやはや大した根性だ。
帰りは那智勝浦からフェリーらしい。いろいろ話をしながら一緒に那智の滝見学。
さすが落差133mの大瀑布。圧倒される迫力だ。

那智の滝 神格化されて当然だわ

那智の滝 神格化されて当然だわ

一日中バイクに乗ってると階段きついっす

一日中バイクに乗ってると階段きついっす

30分ほど見学して出発。スクーターの彼はこの上の寺に用があるらしく、ここで分かれた。
僕はマップルおすすめの道、那智山スカイラインへ。通行料300円を払って、さらに登りのワインディング。
展望台の景色はたしかに素晴らしかったが、スカイラインを抜けて国道へ戻る際に迷い込んだ県道235号線が悲惨だった。
ひどい悪路で道幅も狭くガードレールもない。対向車が現れないことを祈りつつソロソロと進むこと数十分。
ようやく下里で国道に合流。今日のキャンプ地、潮岬まで海沿いを走り抜ける。
本州最南端の町・串本町に入り、橋杭岩にちょっとだけ立ち寄って、潮岬へ。

那智山スカイラインより熊野灘を遠望

那智山スカイラインより熊野灘を遠望

串本の奇岩 橋杭岩

串本の奇岩 橋杭岩

17:00、潮岬・望楼の芝生キャンプ場に到着。 土曜日の夕方だけあって、他にもバイクが数台。
すでにテントもいくつか張られている。広大な芝生の敷地。好きなだけ野営スペースがある。
しばし、そこにいたライダーと談笑。埼玉から青の92年式セローで来ていた男性も。
明日フェリーで徳島に渡る予定らしい。いいなぁ。
おっと、日暮れが近いのであんまりのんびりしていられない。
テントを張って、買出しと温泉目当てに、串本の町にひとっ走り。
とりあえず潮岬の付け根にあるAコープへ。
お夕飯のおかず、何にしようかしら…(主婦風)と迷いつつ鮮魚コーナーへ。
カツオは昨夜食べたしなぁ…お、鯨だ、でも切り身大きいなぁ、1000円もするし…。
なんて思いつつ眺めていると、な、な、なっ!?

イルカ発見 しかも格安

イルカ発見 しかも格安

【行動しなかったことを後悔するより、行動したことを後悔する方がまし】が私のモットー。 迷わず決定。
あとは地元のフルーツトマトとビール、おやつの菓子パンを購入。どんな味か楽しみだ。
買出しを終えたら今度は温泉。
串本温泉サンゴの湯というとこに入るつもりだったが、来る途中に見かけた天然温泉・串本に向かった。
入浴料500円。ホテルに併設された温泉だがこじんまりした地域密着型の銭湯風。
汗を流して体を洗い、湯船にザブン。ふわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。
昨日入りそびれたせいもあるだろうが、むちゃくちゃ気持ち(・∀・)イイ!!。極楽極楽。
入浴を済ませ、給油してキャンプ地へ戻ったのが18:30。
さっそくビールを開けてゴキュゴキュ。とりあえずフルーツトマトをガブリ。うめ~。しみる~~。
一息ついたところで、本日のメインディッシュ、イルカの刺身。
白い皮と赤々とした肉が薄くスライスされている。
生姜醤油でまず一切れ口に放り込んでみた。
( ̄~ ̄;)ウーン
なんだ、この独特の匂いは…。イルカの皮下脂肪の匂いだろうか?
甘い香料のロウ細工をイメージさせる…一言で言うと、すごく不味い。
飲み込むことを躊躇しながら口の中でモグモグ噛んでみるが、皮がどうもゴムみたいで噛み切れない。
コリコリと硬い表皮に、甘い人工香料を使ったゴムのような皮下脂肪、そして血なまぐさい赤味。
米を炊きながら3切れほど食べたが、それ以上箸が進まない。とてもこのままではオカズにできない…。
とにかく、なんとか食おうと、醤油で炒めることにした。
七味と生にんにくでできるだけ臭みをごまかす。

イルカの醤油炒め南紀風

イルカの醤油炒め南紀風

( ̄ヘ ̄;)ウーン
何かの内臓系の肉だと思えば食べられないことはないなぁ、という程度。
なんとも食欲の減退するオカズのせいで御飯はあまりすすまない。が、鬱々と時間をかけて何とかイルカ完食。
半分ほど残った御飯をお茶漬けにしてサラサラ食べたが、その美味かったこと。(T▽T)
それにしてもM氏に食べさせてみたかった…。
さて、その日の深夜。
熟睡してると、頭上、枕もとのテントの外でなにやらガサガサと派手な音。
なんだなんだ?とあせって 電気をつけると気配は消えた。
入り口を開けて前室を見ると、ゴミ袋が荒らされている。
そういえば夕方、駐車場を猫が横切っていた。やつの仕業か…。
イルカの血の匂いが呼んでしまったんだろうなぁ…。
フライシートの隙間から必死に前肢を伸ばした様子が伺える。
どうしたものか。
荒らされるのは嫌だが、あの匂いが充満する中で寝るはもっと嫌なのでゴミ袋をテント内に仕舞うわけにもいかない。
厳重に縛って、フライシートからなるべく離れた位置に置いた。
「俺が寝付くまで頼むから静かにしてくれよ…」
そう思いつつ目を閉じた。
タタタタタタッ…
フギャッ!!
フォォォォォォォォッッ!!!
…。
だから喧嘩とか、するなってばさ…。。



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