毎年、年度が替わるこの時期は、納期と受注の狭間でシステム開発がひと段落する。
で降って沸いた四連休。これだけまとまった休みはそうそう取れない。
遠くへ。なおかつ、この季節だ、なるべく温暖な場所へ。
そんなこんなで紀伊半島へキャンプツーリングに出かけることにした。
仕事や雨を考慮して一週間ずらした連休第一日目の朝は見事に雨。
気温も低めで気持ちが萎えそうになるが、天気予報は雨のち晴れなのだ。ここは意を決して出発。
午前6:00過ぎ、いつもの装備を積んでレインコートに身を包み、雨に濡れる環状七号線に乗り出した。
とりあえずの目的地は伊勢。遠い…ひたすら遠い。
7:30。R246から環八を経て東名高速道路の東京ICへ。
平日の朝なので下道は渋滞気味だったが、さすがに高速は空いている。
とはいえ雨の中の遠距離走行。エンジンオイルの具合も気になるのでスピードは控えめ。
80~90km程度の速度で巡航した。
大井松田から山北のあたりにさしかかると雨脚が強くなってきた。しかもかなり空気が冷たい。
涙ぐみながら足柄SAでトイレ休憩。まだまだ道のりは遠い。
下り勾配になり御殿場から沼津へ抜けたころには寒さも和らぎ、雨も小ぶりに。
静岡をすぎたあたりでようやく雨が止んだ。9:40、雨具を脱ぐついでに牧の原SAで朝食と給油。
朝食は桜海老のかき揚げそばと焼きおにぎり。実家のすぐ近くなのだが今回はスルー。
さて、江戸からの伊勢参りといえば「東海道中膝栗毛」が有名だが、膝栗毛ってなんじゃらほい?
栗毛は馬の毛色。「自分の膝が馬代わり」ってことで徒歩旅行のことらしい。なるほどねぇ。
さすがに弥次さん喜多さんのような徒歩旅行じゃないので膝栗毛とは呼べない。
さしずめ鉄青毛(青毛=黒色)といったところか。
今日も乗り手に苦労させられてる鉄馬である。
10:30、浜松ICを降りて浜名バイパスへ。
馬手に浜名湖、弓手に遠州灘。頭上を仰げば朝方の雨が嘘のような青空である。
ただし風は強い。
浜名バイパスから潮見バイパスを経てR42へ。
愛知県の東南から西に伸びる腕のような渥美半島の先端、伊良湖岬を目指す。
それにしても渥美半島。気にも留めていなかったが、かなり広大。というかだだっぴろい。
単調なくせに見通しがあまりよくなく大型車も多い。要は走っていてつまらない。
退屈な時間を経て12:00過ぎ、ようやく伊良湖港の伊勢湾フェリー乗り場に到着。
隣接された道の駅・クリスタルポルトで乗船券を購入。
何があるかわからないので往復はやめて片道のみ2,700円にしておいた。(この判断は正しかった)
それにしても伊勢湾フェリーのクルーたちは無愛想だ。
船が到着して乗船時間が迫っても、何のアナウンスもない。
車列の先頭に来て面倒くさそうに黙って指で「あっち」と指す程度である。
船に乗り入れても、停車位置やバイクのギアについては、こちらが聞くまで何の言葉も発しない。
船旅は好きだが、この船のクルーはマイナス評価。もうちょっと接客態度を学んで欲しい。
12:45、予定通り出港。
船の中でのんびり休憩と行きたい所だが、そうもいかない。
キャンプ場の予約に、ルートの確認などなど。
一時間弱の伊勢湾横断クルーズはあっという間に終了。
いよいよ紀伊半島の鳥羽に到着である。
13:40。鳥羽に上陸してまず目指したのは伊勢志摩スカイライン。
ツーリングマップルのおすすめルートである。
今日はオフロードなしで観光に徹するつもりだ。
R167を少し伊勢方面に進んで左折し、通行料金860円を支払う。
うねうねとワインディングが続くが走りやすい。
高度を稼いで、14:00過ぎ。頂上の朝熊山(あさまやま)展望台で到着。
いやはや、海・山、共にいい眺めである。。
まさにこれからの紀伊半島の旅を予感させてくれる。
それにしても風が強い。ちょっと寒いので何か食べることに。
休憩所でおばちゃんにサザエの串焼き250円を注文。
「それにしても今日は風強いですねぇ~」
「そやねぇ。こわない?」
「はっ?」
「こわない?風強いやろ?」
「あ、あぁ、怖いですね、風強いですもんね」
そうだった。思い出した。
三重県は中部地方に分類されることが多いが、都市部を除いてほとんど関西の文化圏だった。
この先の紀伊半島ももちろん関西弁。うーん困った。
似非関西弁を無理して使ってもボロがでるだろうなぁ。
しゃーない、あえてツーリング中は標準語で通そう。
休憩を終えて再出発。スカイラインを下り、有料道路終了。
次の目的地、伊勢神宮(内宮)は目と鼻の先である。
R42を経てものの数分で到着。14:30。
平日だというのに駐車場はえらい混みよう。
さすが現代でも伊勢参りは盛況らしい。
「伊勢参り、大神宮にもちょっと寄り」なんて川柳もあるが、なかなかどうして、かなりの参拝者数である。
いわゆる伊勢神宮は内宮と外宮があって、「外宮参らな片参り」と言われてるらしいが、この「片参り」という言葉、ちょっと怪しい。
上記の朝熊山では 「お伊勢参らば朝熊(あさま)をかけよ 朝熊かけねば片参り」 。
また、後日訪れた熊野大社では「伊勢に七度、熊野に三度、どちら欠けても片参り」。
北伊勢の多度大社でも「お伊勢まいらば、お多度もかけよ、お多度かけねば片参り」。
江戸時代に伊勢参りの人気に便乗した各地の商売人が言い始めたとしか思えねー。
ということで片参りだろうと何だろうと気にしない。内宮正殿だけで参拝終了。
門前町のおかげ横丁で遅い昼食。伊勢うどん525円を食す。
もちもちした太麺にみりん醤油の甘辛いタレと刻んだネギの単純な味だった。
まぁ江戸時代からの伊勢の名物だ。こんなものだろう。
松坂牛を使った牛丼屋もあったが、そっちの方がよかったか?
15:30。今日のキャンプ地のある志摩方面に向かう。
位置関係で言うと、紀伊半島の東端に、伊勢・鳥羽・志摩と北から並んでいる感じ。
R42からR167を経て二見~鳥羽へ。夫婦岩も見たかったが、急いでいたので無視。
キャンプ地まで、かなりの距離があるのが急いでいた理由なのだが、できれば手前で立ち寄り湯に入るつもりだった。
事前に調べておいたその温泉。マイナーで地元民が銭湯的に使ってるらしい。
ちょっと回り道になるが楽しみにしていた。
途中のスーパーがあったので夕食と酒の買出しを済ませる。
鳥羽で国道沿いに進み、船津のあたりで…伊勢鳥羽温泉・延命の湯の看板発見!
玄関が閉まっているので、どうにも困った。
裏手に人がいたのでたずねてみた。
「温泉、入りたいんですが…」
「あぁ、もうやってないわ」
「ありゃ、この時間にもう閉店ですか」
「ちゅうか、たぶんずっと営業してないはずやけど」
Σ(゚口゚;
仕方ない。たしかキャンプ場には温水シャワーがあったはず。それで我慢しよう…。
鳥羽まで戻り、そこから真珠の養殖が盛んな海沿いを走るパールロードを快走。
これもツーリングマップルのおすすめルートである。眺めもよくて走り易い。
志摩スペイン村を横目に、パールロードの有料部分を抜け、R260に合流した時点で17:00をだいぶまわっていた。
キャンプ場には18:00までには到着すると伝えてある。急がねば。温泉なんて入ってる暇無かった。
途中で給油も済ませ、R260をひたすら走る。
御座岬の先端、志摩観光農園キャンプ村に到着したのは18:00ジャストだった。
まずは受付。料金はオフシーズンの500円だとばかり思っていたが、ハイシーズン料金の1000円だった。
(あとで公式HP確認したが、オフシーズンのキャンプサイト500円+施設利用料500円=1000円という計算だったのかも)
まぁ500円くらいは許そう。許せないのは温水シャワーが使えないことである。(▼皿▼)ノ彡☆ バンバン!!
そりゃあ、この日の客は僕一人だったので、ボイラー使うのはコスト的にまるっきりあわないだろう。
だが強風で寒い中走って来たのだ。近所のホテルでの入浴チケットとかキャンプ代割引とか代替サービスがあってもよかろうに…。
なんてこと言いつつも、不満はそのくらいで、あとは愛想よくキャンプサイトを案内していただいた。
木陰で風を避けられ、水場も近い場所を進められ、そこに決定。
テントを張るのはひさびさだ。炊飯の手順なども含めて野宿の勘を忘れつつあった。
今日のおかず兼つまみはカツオの刺身にカニカマボコ。
ビールを二本あけてから米を炊く。強風のため時間がかかった。
火加減・水加減とも間違えたのかちょっとベチョベチョ。
カツオの刺身をガバっと乗っけて丼風にワシワシ食う。
うめぇ。なんだよ、うめぇじゃんか、カツオ丼。
食べ終わったら食器を洗い、翌朝用の米を水につけておく。
東京から一日走り通して疲れたので、そのまますぐ寝袋に。吹き付ける海風のうねりが気になる。
ラジオをつけ、地元の番組の周波数を探す。
テレサ・テンの「時の流れに身をまかせ」が流れていた。
なぜか旅先にいることを強烈に意識させられる。
さぁ、明日はどこをどう走ろうか。
LEDランタンの下で地図を広げ、今日の疲れも一時忘れて翌日の旅程に思いを馳せた。