作戦名『べほま』報告書


作戦名『べほま』 -ある夏の日の海水浴について-
七月廿六日未明、幕僚本部ニ於ヰテ立案サル。
近日、戦闘力・機動力ガ著シク損傷シ、
且ツ戦闘意欲ノ芳シカラザル鹹狗部隊ニ対シ、
全軍ヲ挙ゲテ慰安・督励ヲ実行シ、
完全ナル戦力回復ヲ成就セシムルノガ本作戦ノ目的也。
費ヤス軍資金・兵站・物資ニツイテハ制限無シ。
能ウ限リ速ヤカニ作戦ヲ実行セヨ。
但シ急ヲ要スル作戦ノ為、単独ニテ行動サレタシ。
要ハ一人デ海水浴ニ行クコトニナッタノダヨ。
七月廿七日 ○七○○ 東京都中野区野方某所・鹹狗部隊本営ニテ作戦開始。万全ノ準備ヲ期ス。
同日 ○七二○ 気象庁ヨリ「曇天ナレド降水確率ハ零割零分」トノ情報ヲ得ル。
同日 ○七三○ 西武新宿線野方駅ヲ出立。品川マデ参百六拾円也。
同日 ○七五○ 山手線高田馬場駅着。
同日 ○八二○ 山手線品川駅着。朝食トシテ「天玉蕎麦」ヲ食ス。四百壱拾円也。
同日 ○八二七 京浜急行快速線ヘ速ヤカニ転進。蕎麦ノ汁ヲ飲ム時間無シ。
同日 ○九三六 三崎口駅ニ到着。品川ヨリ三崎口マデノ運賃九百円也。
同日 ○九五〇 乗合バスニテ油壺へ向カフ。運賃弐百六拾円也。
同日 一〇〇〇 油壺着。徒歩ニテ荒井浜海水浴場ヘ進軍。海ノ家ニ作戦協力ヲ依頼。出費壱千円也。
作戦ノ実施地点トシテ荒井浜海水浴場ヲ選択シタノハ以下ノ理由ニヨル。
一、鹹狗部隊ガ嘗テ別作戦ニテ来訪済デアル。
一、「全国水浴場八拾八選」ニ選バレ、水質ガ極メテ良好デアル。
一、要ハ思イツキデアル。
「砂浜ハ予想以上ニ漂流物ガ多ク汚イ。作戦展開ニ影響スル恐レアリ。」トノ報告。
直後、沖磯場ヲ斥候中ノ者ヨリ「此処ハ頗ル水質ヨシ」トノ報告ニヨリ、作戦ヲ続行。
三時間程、鹹狗部隊ハ「しゅのーけりんぐ」及ビ日光浴ヲ実行セリ。
作戦監視本部ニ「回復ノ兆候アリ」ト打電。
同日 一一〇〇 海ノ家ニテ「かれーらいす」ヲ食ス。七百円也。「所詮海ノ家、味ナンテ」トノ報告ヲ受電。
同日 一三〇〇 荒井浜海水浴場撤退。海ノ家関係者ヨリ「本年四月ニ公衆便所ヲ修繕シ清潔ニナッタ」トノ報告アリ。
同日 一三一〇 三浦沖海洋深層水露天風呂ニ移動。入浴。貸手拭込デ壱千参百円也。
同日 一三四〇 入浴完了ト同時ニ「まっさーじ」ヲ依頼。重点ハ肩・背中・腰ト打電。参拾分デ参千円也。
同日 一四一〇 「まっさーじ」完了。続ケテ「生びーる」「特製鮪丼」ヲ注文ス。合計壱千六百五拾円也。
同日 一四四〇 摂取完了。作戦監視本部ニ「回復著シ」ト打電。
同日 一五○○ 油壺・城ヶ島快速観光船ニ乗船。海ノ男ノ雰囲気ヲ醸ス。乗船料壱千参百円也。
同日 一五三○ 城ヶ島着。徒歩ニテ散策ノ後、三崎港ヘばすニテ移動。弐百六拾円也。
同日 一六〇〇 三崎港着。釣具店ニテ状況ヲ聞キ、青磯目・ちょい投仕掛・ソノ他物資ヲ購入。壱千弐百円也。
同日 一六一〇 三崎港花暮岸壁ニテ釣リ開始。隣ノ家族連レト情報交換等セリ。
同日 一七四五 釣リ終了。釣果ハ白ギス弐、ハゼ参、ベラ壱ナルモ輸送困難ナ為、隣ノ家族ニ譲渡ス。
同日 一八〇〇 作戦完了。完全撤退開始。「作戦ノ目的ハ果タセリ」ト打電。
同日 一八〇三 三崎港ヨリ三崎口駅ニバスニテ移動。弐百九拾円也。
同日 一八三〇 三崎口駅ヨリ往路ヲ辿リツツ帰宅。壱千弐百六拾円也。
同日 二〇三〇 西武新宿線野方駅ニ到着。鹹戌部隊ヨリ体調悪シトノ報告アリ。
同日 二〇四〇 野方薬局ニテ体躯ヲ冷却セルすぷれーヲ購入。
同日 二二三〇 作戦完了報告。内容ハ以下ノ通リ。
現状、鹹戌部隊ハ日焼ケニヨル体力消耗著シ。
体温ハ参拾八度七分トノ情報モアリ。
但シ鹹戌部隊ノ慰安・督励ハ自体ハ成功セリ。
次期作戦決行ノ際ハ輜重兵ニ「日焼ケ止メおいる」ヲ携行セシムベシ。
以上。



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です


*