旅は道連れ


なかなか寝付けず、うとうとしたとこで時計を確かめたら午前0時。
隣のテントでM氏も起きてる様子だったので声をかけてみた。
「塩ちゃん、紙、貸して」
深夜のNGSかよ…。
木陰でしゃがむM氏のヘッドライトを横目に、夜空を見上げれば満天の星々。
標高も高く、空気も澄み、邪魔になる地上の明かりもない。
ちょうど月も出ていなかったので星の光が際立った。
これまで見たこともない天の川が、頭上に帯を描いている。
NGSから戻ってきたM氏と二人でしばし星空鑑賞。
ヘッドライトをOFFにしても、星明りだけで視界がある程度確保できた。
長野のような標高の高い地域でしか得られない貴重な経験である。
一服して、テントにもどり、今度こそ熟睡…。
さて、朝。起きたら早速M氏が釣りの支度をしていた。
朝食前に僕も竿を取り出して糸を垂れる。
釣れたらもちろん朝食のおかずに…。
なるはずだったが、またも釣果なし。ヽ(`Д´)ノウワァァン!!
仕方なく買っておいた食料を調理。
M氏は木立に生えていた山椒の実を齧りながら、足元のフキを摘み、川で洗って皮を剥いている。
僕も真似して山椒の実を齧る。鮮烈な香りが口に広がり、やがて舌先に心地よい痺れ。
フキはアクが面倒くさいだろうからやめといた。
僕の朝食はパックご飯(サトウのご飯の類ね)をほぐして、野沢菜茶漬けの元を混ぜて水をいれ煮込んだ、即席雑炊。
M氏は…「トムヤンメン」!? なんだそりゃ!?
なんだかよく分からないがトムヤンクン風スープに麺の入ったものに、さっきのフキを茹でたものを投入…。
なぜ、こんな状況でそういうものを選ぶかなー…。
昨日、彼がスーパーでそれを買うのを見たときに、僕は心中ひそかに「きっと後悔するだろうな」と思ってたのだが、まさに図星。
あの悪食のM氏が、アクたっぷりのフキ+癖のありすぎるスープを一口食べて、「二度と買わない」発言。(もっと早く気付けってば…)
なんのかんのいいつつスープを残して完食し、口直しといいつつ、デザートの梨にかぶりついていた。

小黒川 たしかに黒い岩盤が目立った

小黒川 たしかに黒い岩盤が目立った

僕は無難に雑炊 朝食に冒険は不要ですな

僕は無難に雑炊 朝食に冒険は不要ですな

のんびり片づけをして、ちょびっとバイクの調整をして、午前8:20出発!
とりあえず目指したのは道の駅・南アルプスむら長谷。近かったので、8:35到着。
ゴミを捨てさせていただいて(申し訳ないです、でもきちんと分別しました)、
トイレが掃除中だったので 、庭の散水栓で水を確保し少し休憩。
M氏はどこかに電話。僕は今日の目的地のGPSポイントを登録。

庭のテーブルにいたアマガエル

庭のテーブルにいたアマガエル

9:00、出発。
高遠市街を抜けて 町道高嶺線という未舗装路を目指す。
分かりにくい入り口で、何度か道を間違えそうになったが、GPSのお陰でそれほど迷わずに済んだ。
「全面的にフラットなダート17km」とツーリングマップルには記述されている。
よーし、気合入れてくぞー!
…と思ったら、ダートの途中の分岐を間違えたらしく、すぐに舗装路に出てしまった。
引き返そうかとも思ったが、M氏が面倒くさそうだ。
久々の長距離ツーリングで肩・背中・腰・尻・手のひらなどあちこち痛むと、昨夜からしきりに訴えている。
無理をして体を壊すのもあほらしい。それにこの舗装路はダートと平行して走っているので目的地も目指すのに都合がよい。
というわけでアスファルトをセカセカ走ることにした。いきあたりばったり。
で、ついたのが昨日走った金沢林道の一地点。
ここから千代田湖という小さな湖を経て国道に出る予定だったのだが、
あちこち道に迷ってしまった。「~方面」という看板がいたずらで向きを変えられていたのだろう。
湖とは正反対の峠に出たり、とんでもない悪路に入り込んでしまったり、いらぬ時間を費やした。
10:00過ぎ、ようやく千代田湖に到着。

金沢林道との交差点

金沢林道との交差点

千代田湖 こじんまりしてました

千代田湖 こじんまりしてました

ここから国道152線に出て、少し北へ行き、西へ折れ日影入林道に到着。
「工事中車両通行止」とか書いてあるゲートがあったようなないような…。
日曜は工事も休みなので、通り抜けさせてもらうことに。
砂利道だが工事のため平らにならされていて大変走りやすい。
M氏はあっというまに土ぼこりのかなたへ消えていった。
もう転びたくない僕はここでものんびり走る。
途中でBMWとぜルビス(たぶん)の二人組みが停車して地図とにらめっこしてた。
会釈して通過~♪
ダートを抜けると、もみじ湖というダム湖があらわれた。
釣り人が何人も見える。あとで調べたらブラックバスのポイントらしい。
こんな山上湖までブラックバスに汚染されてる状況は本当に問題だと思う。
釣ったら食え!

もみじ湖 もみじがたくさん植樹されてるそうです

もみじ湖 もみじがたくさん植樹されてるそうです

ここから諏訪箕輪線という一車線の県道をしばし北へ。
ツーリングマップルでは「廃村をつなぐ寂しいルート」と紹介されている。
廃村とまではいかないが廃屋がいくつもあり、舗装路なのに林道のような雰囲気だ。
行楽シーズンなので人はちらほら見かけるがすれ違う車は全くない。
っと、ここでびっくり!
前を行くM氏が停車してるな…と思ったら、
大きな鹿がM氏の前を横切り左手の斜面を駆け上がった!
あわてて写真を撮ろうとしたが、木立の奥に潜んでしまい、シャッターチャンスを逃してしまった。
M氏によると、道を走ってたら鹿がいて、しばらくにらめっこしてたらしい。
で、僕が後ろから来たので逃げてしまったとのこと。
立派な角を生やしたオスだったそうである。
貴重な経験ができた。
これまでにも渓流釣りで訪れた秩父の山中で、2・3頭の野生の鹿の群れを遠くから見かけたことはあるが、
接近遭遇は奈良でせんべいを餌に集めた経験ぐらいしかない。
野生のカモシカやシカを間近で見ると、日本の国土は人間だけのものじゃないんだなぁと実感できる。
あたりまえの話だが、東京に住んでいると大型哺乳類は人間しか見かけないためついつい錯覚してしまうのだ。
戒めのためにも、野生動物との出会いを大切にしたい。
…次は熊の予感…(;´Д`)
しばらく進んで、右に折れ、次のダートへ。
先ほど通過してきた工事中の平らな砂利道へ抜ける道である。
っとまたさっきのBMWとぜルビスのコンビが停車してる。
笑いながら会釈して通過~♪
国道へ抜け、次に目指したのは杖突峠の茶屋。
ここの展望台の眺めが素晴らしいらしいのだ。
11:40峠の茶屋に到着。
ツーリングマップルで紹介されてるポイントだけあってバイクが多い。
ここにもBMWの集団がいた。待ち合わせポイントにしてるらしく、彼らも我々と一緒に展望台へ。

左から諏訪湖~霧が峰~八ヶ岳 大パノラマの壮大な眺め(拡大画像はサイズでかいので気をつけて)

左から諏訪湖~霧が峰~八ヶ岳 大パノラマの壮大な眺め(拡大画像はサイズでかいので気をつけて)

のんびり眺めた後、展望台のある喫茶店でキウイアイスを食べつつ一服。
まだ早いが、M氏の体調が辛そうなのと、渋滞が心配だったので、市街地で昼飯を食べて帰ることにした。
表に出たら、今日、二度会ったBMW&ぜルビスが到着したとこだった。
BMWの集団が待ち合わせていたのは、どうやら彼ららしい。
「よく会いますね~」と互いに笑いあって別れた。11:00出発。
「やっぱ名物っぽい物を一度は食べないとねー」
といいつつ、諏訪の市街地で食い物屋を探してる最中、とある看板を見つけた。

よくある標語の看板に見えますが

よくある標語の看板に見えますが

ここに注目!

ここに注目!

お前は柳沢慎吾かよ!?(#゚Д゚)
とか突っ込みたくなるっしょ? ならない?
おれだけですか、そうですか。
さて、そんなどうでもいいことは置いといて昼飯。
結局、僕の希望もあって「小作」というほうとうの名店に決定した。
前回、山梨でほうとうをはじめて食べて以来、一番有名な小作という店で食べて見たかったのだ。
このあたりは長野でも山梨に近い地域でもあるので一応名物ともいえるし、
M氏もほうとうは好きなほう(たぶん何でも好き)らしいので、その店に落ち着いた。
僕はイノシシ肉入り、M氏は鴨肉入りのものをそれぞれ注文した。
味は…確かに美味しかったが、正直、先日食べた不動の方が好みである。
ま、後発の店のほうが客の好みに合わせてアレンジできるので、その分有利ともいえるだろう。
それよりむかついたのが受付のおばちゃんの接客態度。なんか、ぞんざいな客あしらいが鼻につく。
もう来ねーよ! ヽ(`Д´)ノウワァァン!! って感じです。

ダイエット中なので肉を食べたのはひさしぶり

ダイエット中なので肉を食べたのはひさしぶり

小作 諏訪インター前店

小作 諏訪インター前店

さてさて、食べ終わって13:20。一路東京に向かって出発。
高速に乗り、90km前後で巡航するも、東京に近づくにつれてだんだん車の量が増えて来た。
談合坂SAの先で17kmの渋滞という情報もある。
こりゃー帰宅は日没後かな、と覚悟。
すり抜けしつつ談合坂SAに到着したのは15:00前だった。
二人とも疲れと食べすぎで眠気が襲ってきていたので、渋滞をやり過ごすつもりで昼寝することに。
SAはずれの東屋の日陰へ逃げ込み、ベンチに横たわる。
時々片目を開けてちらりとSAの出口を見ると、だんご状態の車の量が徐々に増え続けていた。
しかし、あえて無視すること約2時間。
SAを出発したのは 17:00。ガソリンを補給して、これからの渋滞に挑むべく気合を入れた。
のだが。
M氏が先導してガンガンすり抜けたお陰で、すんなりと渋滞を抜けられた。
18:00過ぎには高速を抜け、甲州街道・環七を経て、18:23、あっけなく帰宅。
ヘロヘロ状態のM氏と別れ、部屋に荷物を運んで…
「あ、今日のうちにシグマリオン3用のAirH”を契約して来よ」
僕は再びバイクにまたがり、夕暮れの中、中野駅商店街を目指した。
東京でしか味わえない、圧倒的な人ごみの喧騒。
案外、それも好きなのかも知れない。
自分の気付かなかった意外な一面。
僕にとっては、東京にいては得られないものの貴重な一つである。



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